GRAバングラデシュにおける

技能実習生の入国前講習

 

GRAバングラデシュでは、日本の技能実習制度に基づき、実習生が日本で安心・安全に生活・就労できるよう、入国前に包括的な講習を実施しています。この講習は、日本語能力の向上だけでなく、日本社会への適応力を高めることを目的としており、実習生の定着率や職場でのパフォーマンス向上にも大きく寄与しています。

本稿では、GRAバングラデシュが行っている講習の6つの主要内容について詳述いたします。とくに第一項では、GRAが最も力を入れている「職場を意識した日本語教育」について重点的に説明いたします。


職場を意識した日本語教育

GRAバングラデシュの日本語教育の中心は、「実践で使える職場会話」にあります。単に「話せる日本語」ではなく、「働くための日本語」を身につけさせることを目的としています。そのため、文法や単語の知識に偏った座学ではなく、現場でのやりとりを想定した訓練を重視しています。

1-1. 指示の理解と応答の反復練習

たとえば、建設現場であれば「スコップを取ってください」「この線の上に並べてください」といった短い指示が頻繁に飛び交います。GRAでは、これらの日本語指示を音声と動作をセットで覚えさせ、即座に反応できるよう繰り返し練習します。

1-2. 職種別の専門語彙習得

GRAでは職種別にカリキュラムを作成しています。介護実習生であれば「オムツ交換」「移乗」「食事介助」などの語彙を、製造業であれば「トルクレンチ」「検品」「ベルトコンベア」などの専門語を、場面ごとに学習します。これにより、職場でのコミュニケーションが円滑になり、実習先の企業からも高評価を受けています。

1-3. ロールプレイによる実践形式の会話練習

GRAでは、実習生同士や講師とのロールプレイを通じて、実際の職場で起こりうる場面を再現します。たとえば、上司に報告する場面、同僚に依頼をする場面、注意を受けて謝罪する場面などを想定し、「申し訳ありません」「少し待ってください」「今、確認します」などの適切な表現を身につけさせます。

1-4. 日本語能力試験(JLPTNAT)の対策も並行実施

実用的な会話訓練と並行して、日本語能力試験(JLPTNAT)の合格を目指した学習も行っています。これにより、日本語学習へのモチベーションを維持しながら、制度的にも評価される能力を育成しています。


日本での生活ルールとマナー教育

技能実習生が職場外でも問題なく生活を送れるよう、日本での生活ルールとマナーの教育にも重点を置いています。特にゴミの分別や近隣住民との付き合い方、公共の場でのマナー(電車の中での会話、禁煙エリアの確認など)は、外国人にとって理解が難しい部分です。

GRAでは、ビジュアル教材や実演形式での指導を取り入れ、「見て覚える」「やってみて定着する」方法を採用しています。たとえばゴミの分別では、実際に分別されたゴミ袋の中身を見せながら、燃えるごみ・燃えないごみ・資源ごみの違いを体験的に学ばせます。


労働基準法と就労ルールの理解

実習生が不当な扱いを受けないためには、日本の労働基準法や職場のルールを正しく理解する必要があります。GRAでは、労働時間・休憩・休日・残業・有給休暇といった基本事項に加えて、雇用契約書の読み方や、給与明細の見方まで具体的に教えます。

また、職場でのパワハラ・セクハラなどへの対応方法、トラブル発生時の相談窓口(監理団体・送出機関・入管支援センターなど)についても詳しく説明し、「泣き寝入りさせない」ための知識を提供しています。


日本の法律・制度と禁止事項

日本は非常に法治意識の高い国であり、技能実習生が知らずに法律を犯してしまう事例も過去には報告されています。GRAでは、交通ルール(歩行者信号、自転車の運転マナー)、飲酒・喫煙年齢、ドラッグの禁止、万引きや賭博の罰則など、日常に直結する法律を重点的に教えています。

特にSNSの利用については、「他人の顔写真を無断で投稿しない」「日本の企業や制度を悪意的に発信しない」など、デジタル時代に即した注意喚起を行っています。


生活インフラの使い方指導

日本の生活に必要なインフラの使い方も、GRAの講習の重要な柱です。

  • 医療制度:保険証の使い方、病院の探し方、診察時の会話練習
  • 銀行:口座開設に必要な書類、ATMの使い方、送金の仕方
  • 交通:ICカード(SuicaPASMOなど)の使い方、バス・電車の乗り方、乗換案内アプリの活用法
  • 通信:スマートフォン契約、プリペイドSIMの購入、Wi-Fiの接続方法

こうした日常的なスキルが身についていないと、せっかく就労できても生活が破綻しやすくなります。GRAでは一つひとつを実地訓練と模擬演習で体験させ、習得を確認しています。


心構えとメンタルサポート

最後に、実習生としての心構えを養うとともに、精神的な健康維持のための支援も重視しています。

6-1. 技能実習制度の目的の再確認

GRAでは、入国前講習の初日と最終日に「なぜ日本に行くのか」「どのような成果を目指すのか」をグループディスカッションや作文を通じて深掘りし、目的意識を明確にさせます。

6-2. 実習先での人間関係の築き方

日本人との距離感や会話の始め方、報連相(報告・連絡・相談)の大切さを実例を交えて紹介し、円滑な人間関係を築く力を養成します。

6-3. メンタルケアと相談窓口の案内

異国での生活はストレスが多く、うつ状態や孤立感に陥る実習生もいます。GRAでは、ストレスサインの見つけ方、自分でできるストレス緩和方法(深呼吸・日記・音楽など)、そして必要時の相談窓口(GRA日本オフィス、監理団体、母国語支援スタッフ)を案内しています。


結び

GRAバングラデシュの入国前講習は、単なる形式的な研修ではなく、「実習生が3年間、日本で安全かつ成長できるための土台づくり」として位置づけています。講師陣は日本での実務経験を持つバイリンガルスタッフで構成され、実習生一人ひとりの理解度や不安に丁寧に向き合いながら指導を行っています。

日本側の受入企業・監理団体からも「即戦力になる」「トラブルが少ない」と高く評価されており、今後も教育内容のブラッシュアップと拡充を継続していく予定です。

今後、日本社会で必要とされる外国人材の育成拠点として、GRAバングラデシュはさらにその役割を拡大してまいります。