バングラデシュからの建設人材の日本語力を高くできる理由

 

はじめに

日本の建設業界では、技能実習生や特定技能外国人の導入が進む中で、日本語能力の重要性が一層高まっています。特に現場では、安全確認や作業指示に対する正確な理解と即応が求められ、語学力の有無が業務の質に直結します。従来は語学面に不安があったものの、バングラデシュからの人材については、高水準の日本語能力を備えた人材育成が現実的に可能です。本稿では、バングラデシュ人建設人材の日本語力を高められる理由を多角的に論じます。

 

1. バングラデシュの教育熱と学習習慣

教育によって人生を変えるという意識がバングラデシュ社会には根強くあり、若者たちは外国語学習にも積極的です。特に日本への渡航を志す若者たちは、語学を将来の可能性を広げる手段と認識しており、真剣に学習へ取り組む傾向があります。また、多くの学生がアルファベット圏の言語に加え、日本語という新たな言語体系にも積極的に挑戦しています。

 

2. 日本語教育体制の発展と制度的な整備

バングラデシュには政府認可の日本語学校が多数存在し、技能実習や特定技能に向けた専門的カリキュラムが整備されています。特にDaffodil Japan 日本語学校やGRAバングラデシュでは、語学と技能訓練を並行して行い、現場で使える日本語の習得が実現されています。両校は、ダフォディル大学というバングラデシュ最大規模の教育機関に属しており、教育環境の質と運営の信頼性が極めて高く、語学指導においても日本人教師を中心に指導体制が整っている点が特徴です。

 

3. 建設現場に即した語学訓練の実践

建設現場で実際に使用される語彙や用語(例:安全帯、指差呼称、足場など)を取り入れた実践的な日本語教育が行われています。単なる教科書学習に留まらず、現場の状況に即した会話練習やロールプレイも行われており、学習した語彙を定着させる仕組みが整っています。また、技能訓練と語学教育を統合することにより、実際の作業場面で使える実践力の高い日本語力が身についています。

 

4. 技能実習・特定技能制度との制度的親和性

技能実習制度ではN4相当の日本語力が求められますが、バングラデシュではこれに対応する教育体制が整備されています。また、特定技能試験(JFT-Basic)への対応も進んでおり、日本語学習と技能訓練を同時に実施することで、渡航前に現場で求められる基本語彙・会話・読解力を総合的に習得できる仕組みが構築されています。

 

5. 日本語力の向上を支える国民性と職業倫理

バングラデシュ人は素直で忍耐強く、指導を受け入れて学び続ける姿勢が強い傾向にあります。また、教師との信頼関係を大切にし、教えられた内容を誠実に復習・実践する文化が根付いており、語学学習に向いた資質を備えています。さらに、日本語を“義務”ではなく“自己実現の手段”と捉えて学ぶ点で、学習成果が高まりやすく、継続的な努力を惜しみません。

 

6. 日本語学習環境のICT活用と継続支援

スマートフォンやeラーニングの活用が進んでおり、YouTubeや日本語学習アプリを使った自学が一般的です。DaffodilグループではICTを活用した授業が実施され、アプリ学習の進捗管理や語彙チェック、発音練習が日常的に行われています。来日後も監理団体・支援機関によるオンライン学習支援や面談指導が実施されており、語学力の維持とさらなる向上が可能となっています。

 

7. 母国語との類似性が与える学習優位性

バングラデシュの公用語であるベンガル語は、日本語と同じSOV語順(主語-目的語-動詞)を基本としています。この文法構造の類似により、日本語を文法的に理解しやすい環境が整っています。また、ベンガル語には敬語や語尾変化も存在し、丁寧語や相手に応じた言葉遣いを意識する文化があるため、日本語の“です・ます調”にも比較的早く馴染むことができます。さらに、発音体系も母音中心であり、日本語の発音に対して苦手意識を持ちにくい点も、学習初期段階での成功体験を生みやすくしています。

 

8. 面接参加までの日本語能力競争の激しさ

 

バングラデシュでは、日本への建設人材として渡航を希望する若者が年々増加しており、GRAバングラデシュやDaffodil Japanといった優良送り出し機関では、面接に進むための内部基準が極めて厳格に設定されています。例えば、日本語能力試験(JLPT)N5以上に加えて、日常会話レベルの聴解・応答、自己紹介や職種説明などを日本語で行えることが面接参加の条件とされています。候補者たちは、“日本語を話せなければ面接にすら進めない”という現実を前にして、語学習得への真剣度が非常に高く、毎日4~6時間に及ぶ学習を続けています。こうした厳しい競争の中で選ばれた候補者たちは、既に高い日本語理解力を持ち、現場対応力も高いため、受け入れ企業にとっても安心できる存在となっています。