バングラデシュの海外人材派遣に対する国の支援及び管理体制
1.はじめに:バングラデシュの海外人材派遣の背景
バングラデシュは、南アジアの中でも人口約1億7千万人を擁する大国であり、その豊富な人的資源を活用する形で、海外労働市場への人材派遣を国家戦略として位置付けてきました。国内の失業率や半失業状態の労働力問題、外貨獲得の必要性、貧困削減などの課題が、海外就労を強く後押しする背景となっています。
現在、約1,400万人以上のバングラデシュ人が世界中で就労しており、特に中東諸国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン、クウェートなど)やマレーシア、シンガポール、イタリア、韓国、日本などが主要な派遣先となっています。これらの海外労働者からの送金は、年間約240億米ドルに達しており、バングラデシュのGDPの大きな部分を占めています。
このような経済的重要性を背景に、政府は多岐にわたる制度整備と支援策を講じ、労働者の保護や派遣の適正化、質の向上に取り組んでいます。
2.管轄省庁と法的枠組み
(1)海外雇用局(BMET)
バングラデシュ政府において、海外人材派遣を所管する中心的機関は、労働雇用省傘下の 海外雇用局(BMET:Bureau of Manpower, Employment and Training) です。BMETは以下のような役割を担っています。
BMETは、派遣労働者のデータを中央データベースで管理しており、各種証明書の発行や労働契約の認証も行います。
(2)海外就労法(Overseas Employment and Migrants Act, 2013)
バングラデシュにおける海外労働に関する法制度の中心は、2013年に制定された 海外就労法(Overseas Employment and Migrants Act, 2013) です。この法律は以下のような内容を定めています。
この法律により、過剰な手数料請求や詐欺的な仲介行為が取り締まられる仕組みが強化されました。
(3)BAIRA(Bangladesh Association of International Recruiting Agencies)
民間側では、認可を受けた海外人材派遣業者が加盟する業界団体 BAIRA(バイラ) が存在します。BAIRAは加盟企業の監督、自主規制、政府への政策提言などを行い、健全な人材派遣市場の形成を支えています。
3.海外派遣のプロセスと制度的支援
バングラデシュの海外人材派遣には、一定の法的手続と支援が制度化されています。
(1)派遣前の手続
■ 登録
海外で働く意思のある労働者は、BMETに登録し、ID番号を取得する必要があります。この登録は、派遣先国や職種に応じた統計管理にも活用されています。
■ 派遣前オリエンテーション
BMETは Pre-Departure Orientation Programme を義務化しており、労働者に対し以下の内容を教育します。
特に中東向けでは、宗教や生活習慣の相違について詳細に指導されます。
■ 健康診断・ビザ取得
多くの派遣先国が健康診断を義務付けているため、BMET指定の医療機関で検査を受ける必要があります。また、ビザの取得も派遣先国によって条件が厳しく、BMETや派遣業者が支援にあたります。
(2)職業訓練
BMETは国内に約70以上の訓練センター(Technical Training Centers)を運営し、以下のような職種別の技能教育を提供しています。
また、日本、韓国、EU諸国など、高度人材需要国向けには語学研修やカスタマイズされた専門講座も行っています。
(3)人材派遣業者(Recruiting Agents)の役割
海外派遣を実務的に進めるのは認可を受けた人材派遣業者です。BMETにより登録され、法定基準を満たした業者のみが人材を派遣できます。彼らは以下を担当します。
政府は業者に対して保証金の預託を義務付け、トラブル時の賠償原資としています。
4.送金促進と経済支援
海外からの送金(Remittance)はバングラデシュ経済において重要な収入源です。政府は送金を円滑に行うため、様々な施策を実施しています。
(1)送金の公式ルート利用促進
過去、送金の多くは非公式ルート(Hundi)を経由していましたが、政府は以下を進めています。
これにより、送金の公式ルート利用率は年々向上しています。
(2)送金者向けの優遇策
送金額に応じた住宅ローン優遇、送金者向け貯蓄証書(Wage Earner’s Development Bond)など、出稼ぎ労働者への経済的優遇も用意されています。
5.海外での保護体制
派遣労働者が海外でトラブルに巻き込まれるケースは少なくありません。そのため、政府は以下の保護体制を整備しています。
(1)駐在外交公館・労働ウィング
派遣先国のバングラデシュ大使館や領事館には Labour Wing(労働ウィング) が設置され、労働者の相談窓口となっています。主な役割は次の通りです。
特に中東諸国では、労働者保護のための活動が活発です。
(2)Welfare Fund(福利基金)
BMETは Wage Earners’ Welfare Fund を管理しており、労働者の死亡時の遺族支援、救出費用、帰国支援などに活用されています。基金への拠出は、派遣時に労働者が支払う登録料や派遣業者の拠出で賄われています。
6.課題と今後の展望
バングラデシュの海外人材派遣は多大な経済効果をもたらしている一方で、いくつかの課題が存在しています。
(1)技能の高度化と多様化
派遣先国が求める技能の水準は年々高まっており、単純労働中心から専門技能や語学力が求められる傾向にあります。政府はBMETの研修内容を高度化し、IT・介護・看護・機械加工・建設技術など新たな分野への対応を進めています。
(2)送金ルートの非公式利用問題
公式ルートを使う割合は増えたものの、非公式送金(Hundi)の利用は依然として存在しています。送金奨励策のさらなる拡充が課題です。
(3)人権侵害のリスク
中東を中心に、バングラデシュ人労働者が劣悪な労働環境やパスポート取り上げ、賃金未払いといった人権侵害に遭うケースが報告されています。外交ルートを超えた国際協力が今後も重要です。
(4)女性労働者の保護
女性の海外就労は着実に増加しているものの、家事労働分野を中心に労働環境が問題視されています。政府は女性向けオリエンテーション強化や送り出し制限など、慎重な対応を進めています。
おわりに
バングラデシュにおける海外人材派遣は、単なる雇用対策にとどまらず、国家経済の根幹を支える重要な柱となっています。制度整備や法的枠組み、送金促進策、労働者保護体制の整備など、多角的な取り組みが進められており、国としての本気度が感じられます。
今後は単純労働中心から専門的な技能者へのシフトや、海外での労働者保護強化、送金ルートの更なる公式化が課題となると考えられます。バングラデシュの海外人材派遣は、まさに同国の未来を支える重要な国家的プロジェクトと位置づけられます。
日本国内連絡先
認定送出機関GRAバングラデシュ/バングラビジネスパートナーズ/OCGコンサルティング(派遣・紹介免許保有)
〒150-0043東京都渋谷区道玄坂1-9-4ODAビル3階Tel:03-3462-0151
代表:岡崎透
www.gra81.com (日本サイト)
www.bangla-business-partners.com
送出機関 現地法人
ダフォディル大学グループ・GRAグローバルリクルーティングエージェンシー/ M/S Global Recruiting Agency
Daffodil Tower 04: 102/1, Shukrabad, Mirpur Road, Dhanmondi, Dhaka-1207, Bangladesh.
Tel: +8802 8156524, 01811-458868 / 現地代表:Mohammad Nuruzzaman 現地担当:Neamat Ullah , 日本代表 Toru Okazaki
お問い合わせはこちらからお願します