海外におけるバングラデシュ人労働者の評価と需要
政府の海外向け及び日本向け支援管理体制
1.はじめに:世界に広がるバングラデシュ人労働者の活躍
バングラデシュは、人口約1億7千万を擁する南アジアの大国であり、国内の労働市場が飽和する中、海外就労は長年にわたって重要な国家戦略となっています。海外労働者による送金額は年間約240億ドルに達し、GDPの10%近くを占める重要な経済基盤です。
海外で働くバングラデシュ人は、2024年時点で推計1,400万人以上にのぼり、世界中でその存在感を高めています。かつては中東が派遣の中心でしたが、近年では欧米、東アジア、東南アジアなど派遣先が多様化しています。
こうした広がりの背景には、バングラデシュ人労働者が各国の産業界で高く評価されている実態があります。以下、その評価の理由や需要の高さを詳しく解説した上で、バングラデシュ政府がどのように支援や管理体制を整えているか、さらに日本向けの体制について述べます。
2.海外での高い評価と需要の背景
海外でバングラデシュ人労働者が高く評価されている理由は、多岐にわたります。以下に代表的な要因を整理します。
(1)勤勉さと真面目さ
多くの派遣先企業や産業界が共通して指摘するのは、バングラデシュ人の「勤勉さ」「責任感の強さ」「忍耐力」です。作業指示や工程管理を確実に守り、現場での規律を重視する姿勢が評価されています。特に建設、製造、サービス業などで信頼を勝ち得ています。
(2)適応力の高さ
文化的、宗教的背景は強いものの、バングラデシュ人は異文化への適応力が高く、海外生活に順応しやすいとされています。中東、欧米、アジアいずれの文化圏でも、短期間で生活習慣を学び職場に溶け込む傾向があります。
(3)比較的低い人件費
賃金水準が他の労働供給国に比べて抑えめであることも、企業にとっての魅力となっています。特に製造業や建設業、サービス業では、人件費削減を目的にバングラデシュ人を採用するケースが多く見られます。
(4)語学習得への意欲
英語を公用語の一つとして教育を受ける環境があり、英語による基本的なコミュニケーション能力を持つ層が多いです。また、派遣先国の言語を習得する意欲が高く、特に日本語や韓国語の習得に取り組む若者が増えています。
(5)職業訓練の充実
バングラデシュ国内で行われる技術訓練の充実も、海外市場での競争力を支えています。BMET(海外雇用局)が運営する技術訓練センターでは、建設、機械、電気、IT、介護など幅広い職種の訓練が提供されており、即戦力としての人材供給が可能となっています。
3.海外市場における需要の動向
バングラデシュ人労働者の需要は、国や地域を問わず多岐にわたります。以下に主な分野を示します。
(1)建設業
建設ラッシュが続く国々では、低コストで真面目に働くバングラデシュ人労働者が重要な人材源です。特に湾岸諸国、マレーシア、シンガポールなどで需要が強い傾向にあります。
(2)製造業
繊維、機械加工、電子部品、食品加工などの分野で、多数のバングラデシュ人が活躍しています。手先の器用さや工程遵守力が評価されています。
(3)サービス業
ホテル、レストラン、クリーニング、介護、家事代行などの分野でも、需要は年々増加しています。特にホスピタリティ分野では、その礼儀正しさが好まれています。
(4)農業・漁業
欧州やアジアでは、季節労働者として農業や漁業への需要も根強く存在します。力仕事を厭わない体力と素直さが評価されています。
4.バングラデシュ政府の支援・管理体制(海外全体向け)
海外で活躍する労働者の保護や派遣の円滑化を目的として、バングラデシュ政府は強力な制度整備を行っています。
(1)管轄機関
海外雇用局(BMET) は、海外人材派遣の主管機関として以下を担っています。
BMETの他、外務省も在外公館を通じて労働者の保護に重要な役割を果たしています。
(2)法制度
2013年に制定された 海外就労法(Overseas Employment and Migrants Act, 2013) は、海外就労者の権利保護と派遣プロセスの透明化を目的に定められた法律です。主な内容は以下の通りです。
(3)派遣前オリエンテーション
BMETは、派遣労働者全員に対し Pre-Departure Orientation を義務づけています。内容は以下の通りです。
これは特に中東や欧米など生活習慣の異なる地域向けに強化されており、トラブル回避に効果を上げています。
(4)技能訓練センターの整備
BMETは国内に多数の Technical Training Centers(TTC) を展開し、以下の職種を対象に訓練を行っています。
これにより即戦力人材の育成が進められています。
(5)福利厚生制度
Wage Earners’ Welfare Fund が設けられており、次のような支援を行っています。
この基金は労働者の登録料や派遣業者からの拠出金で賄われます。
5.海外送金への取り組み
海外からの送金(Remittance)は国家経済を支える生命線です。政府は公式ルート利用を強く促進しています。
(1)送金奨励制度
正規銀行経由の送金に対して最大2.5%の奨励金を支給し、非公式ルート(Hundi)の利用を減らす取り組みが行われています。
(2)金融サービスの拡充
デジタル送金サービスや銀行窓口の拡充を進め、迅速で安全な送金を支援しています。
(3)送金者への優遇策
送金額に応じた住宅ローン優遇や貯蓄証書(Wage Earner’s Development Bond)などが提供され、海外労働者の資産形成支援が強化されています。
6.日本向け支援管理体制
日本はバングラデシュにとって新しい重要市場の一つです。技能実習制度や特定技能制度が導入されて以降、日本向けの派遣が急増しており、それに伴いバングラデシュ政府も特別な対応を行っています。
(1)特定技能制度への対応
2019年に始まった日本の特定技能制度は、バングラデシュにとって大きなチャンスとなっています。BMETは以下を実施しています。
特定技能の試験センターも首都ダッカに開設され、試験実施体制が整っています。
(2)日本語教育の強化
BMET傘下の訓練センターでは、日本語教育を専門に扱うコースが設置されています。初級からN3~N2レベルの習得を目指すコースが整備され、語学習得のスピードが向上しています。
民間でも、ダフォディル大学やGRAバングラデシュなどの教育機関が、日本語教育や特定技能向け訓練を積極的に行っています。
(3)送出機関の認証制度
日本向けの送出機関には特別な認証制度が適用されています。以下が求められています。
政府は不正業者排除に注力しており、派遣労働者の保護を徹底しています。
(4)日本向けオリエンテーションの特化
日本向けには独自の派遣前講習が行われます。
これにより、文化や制度の違いによるトラブルの予防が図られています。
(5)在日バングラデシュ公館のサポート
在日バングラデシュ大使館や領事館では、労働ウィングが設置され、次の支援を行っています。
7.課題と展望
バングラデシュの海外人材派遣は、今後も成長が見込まれていますが、いくつかの課題が残っています。
(1)技能レベルの向上
単純労働から技能人材へのシフトが進む中、より高度な職業訓練や語学教育の拡充が求められています。
(2)人権保護
海外での人権侵害リスクが依然高く、外交ルートの強化や国際協力が必要です。
(3)公式送金ルートの完全移行
非公式送金の撲滅には更なる金融サービスの利便性向上が求められています。
(4)女性労働者の保護
女性派遣者が増加する中で、家事労働や介護分野での保護策強化が重要課題です。
8.おわりに
バングラデシュ人労働者は、世界中で高い評価を得ており、その勤勉さや柔軟性は大きな武器です。政府も積極的に管理体制を整え、労働者保護、技能向上、送金促進に注力しています。
特に日本向けの派遣は、今後さらに増加が見込まれ、バングラデシュ経済にとって重要な柱となっていくと考えられます。両国の協力が深化することで、労働者にとっても、受入国にとっても、より良い未来が開かれていく可能性が期待されます。
日本国内連絡先
認定送出機関GRAバングラデシュ/バングラビジネスパートナーズ/OCGコンサルティング(派遣・紹介免許保有)
〒150-0043東京都渋谷区道玄坂1-9-4ODAビル3階Tel:03-3462-0151
代表:岡崎透
www.gra81.com (日本サイト)
www.bangla-business-partners.com
送出機関 現地法人
ダフォディル大学グループ・GRAグローバルリクルーティングエージェンシー/ M/S Global Recruiting Agency
Daffodil Tower 04: 102/1, Shukrabad, Mirpur Road, Dhanmondi, Dhaka-1207, Bangladesh.
Tel: +8802 8156524, 01811-458868 / 現地代表:Mohammad Nuruzzaman 現地担当:Neamat Ullah , 日本代表 Toru Okazaki
お問い合わせはこちらからお願します