ダフォディルジャパン日本語学校の日本語教育方針

ダフォディルジャパン日本語学校(以下、本校)は、バングラデシュのダッカに所在するダフォディルインターナショナルユニバーシティ(DIU)の関連組織であり、日本語教育を専門的に提供する教育機関です。近年、バングラデシュ国内において日本語学習熱が高まる中、本校は単なる語学習得にとどまらず、日本での進学、就職、技能実習、特定技能など多様な進路に対応できるカリキュラムを整備し、多くの学習者から注目を集めております。本稿では、ダフォディルジャパン日本語学校のカリキュラムを以下の観点から詳細に解説いたします。

  1. 教育理念と教育目標
  2. レベル別カリキュラム構成
  3. 授業の特徴
  4. 使用教材と学習内容
  5. 試験対策プログラム
  6. 進路指導とキャリア支援
  7. ICT活用とオンライン学習体制
  8. 文化教育と交流活動
  9. 教員体制と研修制度
  10. 学習環境と施設

1. 教育理念と教育目標

本校の教育理念は「実用的な日本語運用能力の育成」と「異文化理解を基盤とする国際人の育成」にあります。単なる文法や単語の暗記ではなく、実際のコミュニケーションの場で自信をもって日本語を使いこなすことを目標とし、日本社会での円滑な生活・就労・学習を支える力を育むことを重視しています。

特に以下の3点が教育目標として掲げられています。

  • 聴く・話す・読む・書くの四技能の総合的習得
  • 日本文化・習慣の理解と適応力の養成
  • 学習者一人ひとりの進路や目的に対応した個別最適化教育の実践

2. レベル別カリキュラム構成

本校のカリキュラムは、日本語能力試験(JLPT)のレベルを基準に、初級(N5N4)、中級(N3)、上級(N2N1)の3段階に大別されています。さらに、各レベルは細分化され、学習者の到達度に応じて段階的に進む仕組みとなっています。

初級(N5N4

初級課程では、基礎的な文法、約8001500語の語彙、基本的な漢字(約300字程度)の習得を目指します。日常生活の簡単な会話や意思表示ができるようになることが目標です。授業では発話練習が多く取り入れられ、学生同士の対話を重視します。

中級(N3

中級課程では、抽象的な表現や複文構造など、より複雑な文法事項を学び、語彙は約3000語程度まで拡充されます。新聞や簡単なニュースを読解し、自分の意見を述べる力を養います。特定技能試験対策を並行して行う学生も多く、実践的な日本語力の向上が求められます。

上級(N2N1

上級課程は、日本での進学希望者やビジネス目的の学習者が中心となります。語彙は6000語以上、漢字は1000字を超え、専門分野の日本語やビジネス日本語、敬語表現なども学びます。論理的な文章作成やディベート、プレゼンテーションの訓練がカリキュラムに組み込まれており、高度な運用能力を育成します。


3. 授業の特徴

本校の授業の特徴は、コミュニカティブ・アプローチを徹底している点です。以下の特徴があります。

  • 会話重視
     学んだ表現をその場で即実践する練習が多く、ペアワークやグループディスカッションが頻繁に行われます。
  • アクティブラーニング
     学生自身が主体的に考え、話し、発表する機会が豊富です。教員はファシリテーターの役割を果たし、学習者の発言を引き出すことに注力します。
  • 実践的シナリオ学習
     病院、銀行、市役所、職場など日本で想定される具体的な場面を想定したロールプレイを多用し、即戦力となる日本語力を養います。

4. 使用教材と学習内容

本校では、多様な教材を組み合わせて授業を行っています。代表的な教材は以下のとおりです。

  • 『みんなの日本語』
  • 『できる日本語』
  • 『中級へ行こう』
  • 『新完全マスターシリーズ』
  • TRY! 日本語能力試験』
  • 各種オリジナルプリント教材

また、オリジナル教材の制作にも力を入れており、バングラデシュ人学習者の学習傾向や誤用分析の結果を反映した教材が随所に取り入れられています。

授業内容は以下の通りです。

  • 文法指導
     例文を多用し、文法の使い方を習得するだけでなく、微妙なニュアンスの違いにも焦点を当てます。
  • 語彙学習
     意味だけでなく、コロケーションや使われる場面を学びます。
  • 漢字学習
     書き取りのみならず、読み方や熟語の使い方も重視しています。
  • 聴解訓練
     実際の会話や放送を素材に、情報を聞き取る力を養います。
  • 読解訓練
     新聞記事、パンフレット、小説の抜粋など多様なジャンルを使用します。
  • 作文・スピーチ
     短文から長文へ段階的に指導し、論理的な構成や敬語の使い方を練習します。

5. 試験対策プログラム

本校は、日本語能力試験(JLPT)の合格率向上を大きな柱に据えています。JLPT対策として、以下の特別プログラムを実施しています。

  • 模擬試験を月1回実施し、弱点を個別にフィードバック
  • 試験形式に即した問題演習を授業に組み込む
  • 時間配分や試験攻略法の指導
  • 単語・漢字テストを頻繁に行い、記憶の定着を図る

さらに、特定技能試験、技能実習評価試験、EJU(日本留学試験)対策にも対応し、進学や就職を目指す学習者の多様なニーズに応えています。


6. 進路指導とキャリア支援

本校の大きな特色の一つが、進路指導の手厚さです。以下の取り組みを行っています。

  • 日本の大学や専門学校の進学ガイダンス
  • 出願書類の作成指導(志望理由書、履歴書、研究計画書)
  • 面接練習(想定問答、模擬面接)
  • 企業説明会の開催
  • 卒業生による進学・就職体験談の共有

また、本校はダフォディルインターナショナルユニバーシティのネットワークを活かし、日本側の教育機関や企業とも連携しており、学習者の日本での進路決定に大きく貢献しています。


7. ICT活用とオンライン学習体制

コロナ禍を経て、本校はICTの活用を大きく進めました。オンライン学習環境は以下のように整備されています。

  • ZoomGoogle Meetを活用したライブ授業
  • オンデマンド動画教材の配信
  • MoodleなどのLMS(学習管理システム)の導入
  • 小テストや提出課題のオンライン対応

特に動画教材は、本校の教員が独自に制作したもので、文法解説や発音指導などが視覚的・聴覚的にわかりやすいと好評です。


8. 文化教育と交流活動

本校は、言語だけでなく日本文化の理解を非常に重視しています。以下の活動が定期的に行われています。

  • 七夕、節分、正月など日本の年中行事の体験
  • 書道、折り紙、茶道などの文化体験教室
  • 日本人ゲストとの交流会
  • バングラデシュと日本の文化比較ディスカッション

これらの活動を通じて、学生は日本文化の背景を学び、異文化理解を深めることができます。


9. 教員体制と研修制度

本校には、日本語教育経験が豊富なネイティブ講師と、バングラデシュ人の日本語教師が多数在籍しています。多国籍の教員体制は、学習者が安心して質問できる環境づくりに貢献しています。

さらに、教員の質向上のため以下を実施しています。

  • 定期的な教員研修
  • 授業公開とフィードバック
  • 教材研究会
  • JLPT出題傾向分析の共有

10. 学習環境と施設

本校は、ダフォディルインターナショナルユニバーシティのキャンパス内に教室を持ち、最新のICT設備を備えた教室、図書室、自習室などを完備しています。学生が安心して学習できる環境が整備されているのも、本校の大きな強みです。

また、留学希望者向けにビザ取得のサポートや生活相談窓口も設置されており、海外進出を目指す学習者にとって心強いサポート体制となっています。


結び

このように、ダフォディルジャパン日本語学校のカリキュラムは、基礎から高度な日本語運用力の育成までを体系的にカバーし、かつ実践的な内容が充実しています。語学教育だけでなく、日本文化理解、進路指導、ICT活用など、多角的な教育サービスを提供している点は、バングラデシュ国内でも非常に高い評価を受けています。

 

今後も日本とバングラデシュの架け橋として、多くの学習者が本校から巣立ち、世界で活躍することを目指しています