バングラデシュ人が中東や欧米で労働者として高く評価される理由

 

 

はじめに

バングラデシュは人口約18,000万人を擁する南アジアの国であり、近年、海外での労働市場においてその存在感を一層強めています。特に中東諸国や欧米諸国において、バングラデシュ人労働者は多様な分野で高く評価され、現地の経済や社会の中で重要な役割を果たしています。本稿では、バングラデシュ人労働者が中東や欧米でどのように評価されているのか、またその背景にある要因について多角的に分析します。

 

中東地域で働くバングラデシュ人の人数

合計すると、中東だけでも少なくとも 56百万人規模のバングラデシュ人労働者が活動していると見込まれます。

 

 


中東におけるバングラデシュ人労働者の高い評価

建設業・インフラ分野での評価

中東諸国、特にサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェート、オマーンなどでは、大規模な都市開発やインフラ整備が盛んです。こうした地域で、バングラデシュ人労働者は建設現場で重要な役割を担っています。

バングラデシュ人労働者は、手先が器用で器用さが求められる配管工事、電気工事、溶接などの職種においても高い評価を受けています。長時間の作業にも耐え、真面目で勤勉な姿勢が評価される要因となっており、現場の監督者から「指示通りに忠実に作業をこなし、仕上がりが丁寧」という声も多く聞かれます。

さらに、同じ南アジア地域出身のインド人、パキスタン人、ネパール人と比べ、賃金が比較的抑えられることも企業側にとっては大きな魅力です。コストパフォーマンスに優れた労働力として、中東地域の建設業界で重宝されています。


家事労働・介護分野での評価

中東の富裕層家庭では家事使用人(メイド)、ベビーシッター、介護ヘルパーなどを雇う文化があります。バングラデシュ人女性は、これらの分野で高く評価されています。

バングラデシュ人女性は宗教的背景や文化的価値観から忍耐力が強く、家族への忠誠心が高いことが知られており、これが家事使用人としての雇用において信頼の基盤となっています。例えばサウジアラビアでは、インドネシア人やフィリピン人と並んで人気が高い存在です。また、イスラム教徒であることから、宗教的慣習を理解しており、イスラム諸国の家庭においては信頼感が強い要因ともなっています。

一方、介護分野では高齢化の進む湾岸諸国でバングラデシュ人女性のニーズが急増しています。やさしく、辛抱強く、高齢者に対して丁寧に対応する態度が評価されています。


サービス産業・物流分野での評価

中東の商業施設やホテル、レストラン、空港などでは、バングラデシュ人労働者が多く活躍しています。特にUAEやカタールでは、接客業や清掃業務などで彼らを多く見かけます。

現地企業からは「笑顔で接客ができる」「誠実でトラブルが少ない」という評価を受けており、顧客対応の面でも安心して任せられる存在とされています。また、英語の初歩的なコミュニケーションが可能な人材が多いため、国際的な顧客が多い中東の都市部では重宝されています。

さらに物流分野においても、倉庫作業、配送業務、港湾労働などで重要な戦力となっています。体力的に厳しい業務にも真面目に取り組む姿勢が企業側に高く評価されています。


治安面・信頼性の評価

中東各国の法執行機関や企業からは「バングラデシュ人労働者は犯罪率が比較的低い」という評価もよく聞かれます。もちろん個別にはトラブルもありますが、全体として見ると「勤勉で素行がまじめ」というイメージが強く、雇用側が安心して採用できる理由となっています。


 

 

欧米(ヨーロッパ/北米)で働くバングラデシュ人の人数

 

  • 欧州全体では、UNの統計では約74人が在住しており、このうちイギリスに集中しています theguardian.com+3dhakatribune.com+3adb.org+3
  • イギリス単独では、2021/22年時点で約65人がバングラデシュ系市民または居住者として暮らしており、多くは労働またはビジネス活動に従事しています migrationpolicy.org+11en.wikipedia.org+11dhakatribune.com+11
  • イタリアでは約15万~40人と推定され、産業・サービス業分野で活躍しています 。
  • アメリカ合衆国では、2018年の推計で約21人がバングラデシュ出身者として在住しています 。
  • カナダにも約67万人が在住しています 。

これらを合計すると、欧米地域では 100万~150万 人ほどの規模でバングラデシュ人が活躍しています。

 

欧米におけるバングラデシュ人労働者の高い評価

 

レストラン産業・食品業界での評価

イギリスやイタリア、ドイツなど欧州各国、さらにはアメリカ、カナダなど北米では、バングラデシュ人がレストラン産業で特に目立つ活躍をしています。

例えばイギリスにおいて、バングラデシュ人は「カレー業界の中核的存在」ともいわれ、英国のインド料理店の多くが実はバングラデシュ人によって経営されています。バングラデシュ人シェフはスパイスの使い方や調理技術に優れ、さらに経営感覚にも長けているため、オーナーシェフとして成功しているケースも非常に多いです。

また、食品加工や食品卸売の現場でも、バングラデシュ人労働者の正確で几帳面な仕事ぶりが評価されています。衛生管理を徹底しなければならない分野で信頼される存在となっています。


サービス業・小売業での評価

欧米では、コンビニエンスストア、ニュースエージェント(新聞雑誌販売店)、スーパーマーケットの経営者や従業員としてバングラデシュ人が活躍しています。特にイギリス、イタリア、ドイツなどの都市部では、バングラデシュ人経営の店舗が地域に溶け込み、地域コミュニティの一員として重宝されています。

接客においては、顧客対応が丁寧であり、また長時間労働を厭わない勤勉さが「信頼できる経営者」という評価につながっています。さらに、コミュニティ内でのネットワークを活かし、人材確保や商材調達を円滑に行うビジネススキルも評価される理由の一つです。


清掃・ビルメンテナンス分野での評価

欧米の都市部において、ビルメンテナンスや清掃業務に従事するバングラデシュ人も少なくありません。オフィスビルやショッピングセンター、空港など、大規模施設の清掃においては、効率と品質が非常に重視されますが、バングラデシュ人労働者は「丁寧で責任感が強い」として高評価を受けています。

現場監督者からは、「言われたこと以上に自主的に仕事を探し、きちんと仕上げてくれる」という声が多く、特に信頼性の高さが評価ポイントとなっています。


IT・ホワイトカラー分野での存在感

近年では、欧米でのバングラデシュ人の評価は肉体労働やサービス業にとどまらず、IT分野などホワイトカラーの職種にも広がりを見せています。

バングラデシュ国内のIT教育レベルの向上や、フリーランスプラットフォームの発展により、ソフトウェア開発やウェブ開発、グラフィックデザインなどで欧米企業から仕事を受注するバングラデシュ人が増加しています。英語によるコミュニケーション能力の高さも強みとなり、欧米のクライアントから「リーズナブルで質の高いアウトソーシング先」として高く評価されています。

特にアメリカやイギリスのスタートアップ企業は、バングラデシュ人エンジニアやデザイナーをリモートで活用するケースが増えており、「納期を守り、品質が高い」という信頼を勝ち得ています。


コミュニティの団結力と評価の好循環

欧米におけるバングラデシュ人労働者の高い評価の背景には、コミュニティの団結力もあります。バングラデシュ人は移民社会の中で非常に助け合い精神が強く、仕事の情報共有や生活支援を互いに行っています。

こうしたコミュニティの強固さは、雇用主にとっても「紹介経由で信頼できる人を採用できる」という安心感につながり、結果的にバングラデシュ人労働者の評価を押し上げる好循環を生んでいます。


バングラデシュ人が高評価を得る背景要因

以上のように、中東でも欧米でもバングラデシュ人労働者が高い評価を得ている背景には、以下のような共通の要素があります。

  1. 勤勉さ・真面目さ
    • 長時間労働を厭わず、与えられた仕事をきちんとやり遂げる姿勢。
  2. コストパフォーマンス
    • 高いスキルを持ちながら賃金水準が比較的低く、企業にとってコスト面でのメリットが大きい。
  3. 宗教的・文化的適応力
    • 中東ではイスラム文化への適応力、欧米ではコミュニティを基盤とした柔軟な対応力。
  4. 英語力
    • 特に若い世代を中心に、英語でのコミュニケーションが可能であり、国際的な職場で重宝される。
  5. ネットワークの強さ
    • 移民コミュニティ内での強い連帯があり、雇用側にとって信頼性の高い人材確保が可能。
  6. 犯罪率の低さ
    • 大きなトラブルを起こす割合が比較的少なく、治安面でも安心される。

おわりに

中東や欧米におけるバングラデシュ人労働者は、単なる「安価な労働力」という枠を超え、それぞれの地域の経済や社会を支える重要な存在として高く評価されています。近年では肉体労働に加え、IT分野やサービス業など、より多様で高度な分野へと活躍の場が広がっており、その評価はさらに高まる傾向にあります。

今後もバングラデシュ国内での教育水準の向上やスキル開発が進めば、バングラデシュ人労働者が世界中の労働市場で担う役割は、ますます大きなものとなると考えられます。